高松地方裁判所 平成9年(行ウ)11号 判決
原告 三枝詔資
被告 塩本淳平
被告 日野博夫
右両名訴訟代理人弁護士 田代健
主文
一 原告の被告らに対する請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一請求
一 被告らは、香川県土庄町に対し、各自二六一〇万四〇〇〇円及びこれに対する被告塩本淳平は平成九年一〇月二三日から、被告日野博夫は同月二二日から各支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
二 仮執行の宣言
第二事案の概要等
一 事案の概要
本件は、土庄町が土庄町国民健康保険土庄中央病院長である被告日野博夫(以下「被告日野病院長」という。)に対して支給した同病院長としての平成八年八月分から平成九年七月分(以下「本件期間」ともいう。)の給与(以下「本件各給与」という。)のうち、土庄町長の給与を超える二六一〇万四〇〇〇円について、同町の住民である原告が、被告日野病院長に対する本件各給与は同町長の給与の約三倍という極めて高額であるうえ、地方自治法、地方公務員法に定めた給与条例主義の趣旨に反する条例に基づくものであり、かつ、特殊勤務手当の制度趣旨に合致しない手当の支給を含んでいるから、これらに対する公金の支出は違法であるなどとして、同町長である被告塩本淳平(以下「被告塩本町長」という。)に対し、地方自治法二四二条の二第一項四号前段に基づき、土庄町に代位して損害賠償請求として同町が被った損害金二六一〇万四〇〇〇円、また、被告日野病院長に対しては同条の二第一項四号後段に基づき、土庄町に代位して不当利得返還請求として、本件各給与により得た二六一〇万四〇〇〇円、並びにこれらに対する各訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた住民訴訟である。
二 前提となる事実(争いのない事実及び後記掲示の証拠により容易に認められる事実)及び条例等
1 当事者等
(一) 原告は、土庄町の住民であり、同町議会議員である(甲二、三)。
(二) 被告塩本町長は、本件期間中、香川県土庄町長の職にあった者であり、現在も同様である。
(三) 被告日野病院長は、本件期間中、土庄町国民健康保険土庄中央病院(以下「土庄中央病院」という。)の病院長の職にあった者であり、現在も同様である。
(四) 土庄中央病院は、病床数一三〇床を有し、診療科目は九科目である。平成九年度における入院患者数は三万八〇九五人、外来患者数は九万二五七二人、平成一〇年度における入院患者数は三万九〇〇〇人余り、外来患者数九万七〇〇〇人余りである。パートの医師を除く職員は平成一〇年六月一日現在で一二九名、うち常勤の医師は一二名である。
同病院では、患者を治療する本来の病院業務のほかに、医療関連業務として、へき地巡回診療業務、在宅で介護を要する高齢者等の相談を受ける老人介護支援センター業務がある。(乙七の1、2、証人柴田正巳、同木曽秀平)
2 条例等の関係規定
(一) 土庄町職員の給与に関する条例(以下「本件給与条例」という。)一〇条一項は、「著しく危険、不快、不健康又は困難な勤務その他著しく特殊な勤務で給与上特別の考慮を必要とし、かつ、その特殊性を給料で考慮することが適当でないと認められるものに従事する職員には、その勤務の特殊性に応じて特殊勤務手当を支給する。」として、土庄町職員の手当の一つである「特殊勤務手当」を定め、同条例一〇条二項は、その種類、支給される職員の範囲、支給額などの必要な事項は別に条例で定めるとしている。
(二) 右条例を受けて、職員の特殊勤務手当に関する条例一条二項は、「著しく危険、不快、不健康または困難な勤務、その他の著しく特殊な勤務で給与上特別の考慮を必要とし、かつ、その特殊性を給料で考慮することが適当でないと認められるものに従事する職員に対し、その勤務の特殊性に応じて支給する。」と規定し、同条例二条は特殊勤務手当の種類を定めており、同条(3) に「衛生業務従事職員の特殊勤務手当」を定めている。そして、衛生業務従事職員の特殊勤務手当の支給対象について、同条例五条一項は、「衛生業務従事職員の特殊勤務手当は医師の資格を有する職員が衛生業務に従事したときに支給する。」と規定する。
衛生業務従事職員の特殊勤務手当の支給額については、従来、職員の特殊勤務手当に関する条例五条二項は、「前項に規定する手当は、技術手当とし、その額は町長が別に定める。」と規定していたが(改正前の「職員の特殊勤務手当に関する条例」)、平成八年七月二五日条例第二二号により改正されて、「手当の額は、勤務一月につき当該職員の給料月額の一〇〇分の七〇に相当する金額の範囲内で町長が別に定める。」とし、さらに、「医療職給料表の適用を受ける職員のうち職務の級が三級に該当する職員については、平成一〇年六月三〇日まで、この項に規定する金額に月額一〇〇万円を超えない範囲内の金額を加算することができる。」と規定するに至った(同号附則により、平成八年四月一日から施行日までに支払われた病院長に対する特殊勤務手当は、改正後の「職員の特殊勤務手当に関する条例」による支給とみなされた。)
(三) その後、職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例(平成一〇年六月二二日可決)により、同年七月一日から、本件特殊勤務手当条例五条二項ただし書のうち「三級」が「四級」と改められ、その附則3において、平成八年四月一日から平成一〇年六月三〇日までに支払われた被告日野病院長(職務の級は四級)に対する特殊勤務手当は、改正後の条例の規定による支給とみなされた。したがって、被告日野病院長に支給された本件期間における本件各給与中の各特殊勤務手当(以下「本件各特殊勤務手当」という。)に適用される職員の特殊勤務手当に関する条例(以下「本件特殊勤務手当条例」という。)五条二項は、左記のとおりとなる。
記
「特殊勤務手当の額は、勤務一月につき当該職員の給料月額の一〇〇分の七〇に相当する金額の範囲内で町長が別に定める。ただし、医療職給料表の適用を受ける職員のうち職務の級が四級に該当する職員については、当分の間、この項に規定する金額に月額一〇〇万円を超えない範囲内の金額を加算することができる。」
(四) なお、職員の特殊勤務手当に関する条例施行規則(以下「本件特殊勤務手当規則」という。)四条は、本件特殊勤務手当条例を受け、衛生業務に従事する病院長に対する特殊勤務手当の額について、「病院長には、月額につき給料月額の一〇〇分の七〇に月額一〇〇万円以内を加算」する旨規定し、本件特殊勤務手当条例五条二項ただし書と同旨の規定をおいている(平成八年八月一日に改正される前の同規則四条は「衛生業務に従事する医師の特殊勤務手当は、町長が別に定める」と定めていた。)。
3 被告日野病院長に対する本件各給与の支給状況
土庄町は、被告日野病院長に対し、本件給与条例、本件特殊勤務手当条例、本件特殊勤務手当規則等に基づくものとして、被告日野病院長に対する本件期間の給与として総額三三一六万三四七二円を支給した(弁論の全趣旨)。
被告日野病院長に対する本件各給与は、給料、並びに管理職手当、扶養手当、特殊勤務手当、期末手当、勤勉手当及び初任給調整手当から成り、給料については本件給与条例三条、別表第2の医療職給料表等に、管理職手当については本件給与条例七条等に、初任給調整手当については本件給与条例一九条の二等に、それぞれ基づいて支給されている(弁論の全趣旨)。
4 被告日野病院長に対する本件各給与の期間における被告塩本町長の給与
被告塩本町長の本件期間の給与(以下「被告塩本町長の本件各給与」という。)の総額は一四二二万〇五二〇円であり、給料及び期末手当から成る(弁論の全趣旨)。
5 住民監査請求
原告は、平成九年八月七日、土庄町監査委員に対し、被告日野病院長に対する本件各給与に関する公金支出について住民監査請求を行ったところ、土庄町監査委員は同年一〇月二日付の書面で右住民監査請求を棄却し、右棄却通知はそのころ原告に到達した。
三 争点
1 被告日野病院長に対する本件各給与の支給は、異常に高額であり、地方公務員法二四条一項、三項、地方自治法二条一三項に違反する違法な支出であるか。
(原告の主張)
町長は町の最高責任者であり、被告塩本町長の職務と責任は被告日野病院長のそれより重大であるにもかかわらず、被告日野病院長は、被告塩本町長の本件各給与の約二・三倍に当たる異常に高額な給与を受けており、被告日野病院長に対する本件各給与の支給は、給与につき「職務と責任」に応じて支給することを定めた地方公務員法二四条一項、給与について均衡の原則を規定した同条三項、地方公共団体の事務処理を行うに当たって最少の経費で最大の効果を挙げることを規定した地方自治法二条一三項に違反する。
右均衡の原則の規定に照らせば、被告塩本町長と被告日野病院長の各給与につき同一法条の適用がないとしても、被告日野病院長に対する本件各給与の支出が違法であることの判断は可能というべきである。
(被告らの主張)
(一) 被告日野病院長に対する本件各給与が、被告塩本町長の本件各給与の支給総額を超えるからといって当然に違法になるわけではないうえ、特別職である町長の給与には地方公務員法二四条一項、三項の適用がないのであるから、被告日野病院長に対する本件各給与と被告塩本町長の本件各給与を比較するのは意味がない。
(二) 地方自治法二条一三項は、地方公共団体がその事務処理をするに当たって準拠すべき指針を示したものにすぎないから、いずれも個別の支出行為の適法性に直接影響するものではない。
2 本件特殊勤務手当条例五条二項は、給与条例主義(地方自治法二〇四条三項、二〇四条の二、地方公務員法二四条六項、二五条一項)に違反するか。
(原告の主張)
給与条例主義とは、職員の給与の額、支給方法等の基本的内容を条例で定めて、職員の給与の額、支給方法等を民主的にコントロールさせようとすることをいうのであるから、町長に委任できる事項は技術的細目的な基本的事項に限定されるところ、本件特殊勤務手当条例五条二項は支給額の最高限度を設定するのみで具体的な支給額を明確にしていないうえ、一定の算定基準から当然に具体的金額が計算できるような規定にもなっておらず、町長に広範かつ包括的な委任を認めるものであるから、給与条例主義を定めた地方自治法二〇四条三項、二〇四条の二、地方公務員法二四条六項、二五条一項に違反し、これに基づく被告日野病院長に対する本件各給与の支出は違法無効である。
(被告らの主張)
本件特殊勤務手当条例五条二項は上限の額を具体的に規定しており、町長に対して白紙委任したものではないから、給与条例主義に反しない。
本件各特殊勤務手当の金額については、勤務の特殊性に対応するため、議会の裁量の範囲内で定められたものであり、何ら違法ではない。
3 本件特殊勤務手当条例五条は、議会の裁量権を逸脱・濫用した違法があるか。
(原告の主張)
(一) 本件各特殊勤務手当の支給対象の定め方が違法である。本件特殊勤務手当の対象たる医師の衛生業務は、その定義がなくその内容が不明確であるうえ、本来医療職給料表で考慮されたものであって、特殊勤務手当として支給すべきでない業務であるから、これに特殊勤務手当を支給する旨規定した本件特殊勤務手当条例五条は、議会の裁量権を逸脱・濫用した違法無効の規定である。
(二) すなわち、土庄中央病院長の職務の特殊性は給料やその他の手当で評価し尽くされており、何ら特殊ではない。
(ア) 特殊勤務手当は、「著しく危険、不快、不健康または困難な勤務その他著しく特殊な勤務で、給与上特別な考慮を必要とし、かつ、その特殊性を給料で考慮することが適当でないと認められるものに従事する職員に支給される」ものであるところ、病院長の職務の特殊性は本来の職務内容にすぎず、職務の種類としての医師の特殊性については一般の行政職給料表とは異なる医療職給料表の適用により既に給料で考慮され、職務の複雑、困難及び責任の度合に基づいて区分される職務の「級」や給料月額の「号級」により、個々の職務に見合った評価がなされている。したがって、病院長の職務の特殊性は「給料で考慮することが適当でない場合」とは認められないから、その特殊性を給料と特殊勤務手当とで二重に評価し、本来特殊勤務手当に当たらない業務について特殊勤務手当として支給するものである。
(イ) 被告らは、病院長の職務の特殊性につき「本件のような規模の病院を統括管理し、地理的に離島に存在する悪条件のもと、医師看護婦等の医療スタッフを充実させるとともに、全職員を効率的に機能させ、もって医療水準の維持向上を図るという困難性」を有すると主張するが、本件特殊勤務手当条例五条一項にいう「衛生業務」は本件給与条例一〇条一項、本件特殊勤務手当条例一条二項(以下「本件給与条例等」という。)に規定する「危険、不快、不健康、困難性」には当たらないから、右事情を本件各特殊勤務手当の支出の根拠とするのは本件特殊勤務手当条例五条一項の濫用逸脱である。
(ウ) また、過疎地ゆえの優遇措置の必要性という観点は「特地」勤務手当の支給理由となっても特殊勤務手当の支給理由には当たらない。特殊勤務手当は経営手腕に対する業績給ではないから、被告日野病院長の実績手腕や収益の良さについても、特殊勤務手当の支給とは無関係である。医師の確保、スタッフの教育・研修等の業務は病院長の職責として当然に予定されている職務であり、こうした病院長としての管理業務の特殊性は管理職手当等で評価済みである。加えて、離島勤務における医師の確保の困難性は初任給調整手当で考慮されており、特殊勤務手当に右目的を考慮するというのであれば、それは初任給調整手当との違法な上積み併給となる。
(三) 恒常的常態的な職務の特殊性については給料で考慮すべきである。
特殊勤務手当は、職務の特殊性を恒常的常態的にとらえることが困難である場合や標準化画一化して評価することが困難な場合に支給される手当であり、仮に勤務条件において著しい特殊性を有するとしても、恒常的常態的なものについては給料で考慮すべきであるところ、被告らの主張する(二)(ア)記載の被告日野病院長の職務の特殊性は病院長の職にあれば恒常的に長期にわたり必然的に存在するものであるのであって、臨時的一時的な、あるいは職務の部分的特殊性といえるものではないから、給料の支給対象とすべきである。仮に給与において考慮する必要があり、かつ、その特殊性が給料において考慮されていないというのであれば、給料の調整額によって措置されるべきものである。
(四) 本件特殊勤務手当条例五条は、これまで被告日野病院長に支給してきた給与に対して形式的に合法性を与える目的だけに改正されたものといえるのであって、その制定経緯からすれば当時から給与条例主義潜脱の意図が存在し、違法無効である。
(被告らの主張)
(一) 医師の衛生業務は特殊勤務手当の支給対象に該当する。
「衛生業務従事職員手当」、「衛生業務手当」といった特殊勤務手当が多くの地方公共団体で制度化されている。
(二) 土庄中央病院長の職務の特殊性は給料やその他の手当では評価し尽くせない。
(ア) 土庄中央病院は名実ともに小豆島における中核的総合病院であり、同病院の院長の職は、「医師として患者の診療に当たりながら、右規模の病院を統括管理するというものであるところ、地理的に離島に存在する悪条件のもと、医師看護婦等の医療スタッフを充実させるとともに、全職員を効率的に機能させ、もって医療水準の維持向上を図らなければならない」という著しく困難な職務であり、かつ、医師として衛生業務に従事する際には医療業務特有の危険、不快、不健康など困難な要素を伴うことも避けられないのであるから、本町中央病院長の職は著しく特殊な勤務で給与上特別の考慮を必要とするものというべきであって、右のような特殊性を医療職給料表所定の給料のみで考慮することは適当でない。
医師の職務は衛生業務、臨床業務のほかに基礎的学術研究、医療行政、医学教育など広範な分野に及ぶところ、医療職給料表は医師である職員に対する給料を定めるものであり、本件特殊勤務手当条例五条二項が予定する「衛生業務」に従事することを当然に前提としているわけではなく、医療職給料表で評価し尽くされているものではない。
(イ) 特地勤務手当は、離島その他の著しく不便な地域における生活給として考えられており、本件各特殊勤務手当の特殊性は特地勤務手当で対応すべきものではないし、被告日野病院長の職務は管理職手当で評価される範囲をも大きく超えている。
(三) 本件各特殊勤務手当は、あくまで本件給与条例等の要件を満たせば足りるものであり、すなわち被告日野病院長が衛生業務に従事すればその要件を満たすのであって、恒常的常態的でないことは要件ではない。
4 被告塩本町長がなした本件各特殊勤務手当の支給決定は違法であるか。
(原告の主張)
(一) 本件特殊勤務手当条例五条二項で設定された特殊勤務手当の最高限度額は、あくまで上限を画するものであるにもかかわらず、被告塩本町長は、被告日野病院長に対し、漫然と最高限度額の特殊勤務手当を一律に支給した違法がある。
被告日野病院長の特殊勤務手当は給与総額の少なくとも五割を超える異常に高額なものであって社会通念上の許容範囲を超えており、被告塩本町長の本件各特殊勤務手当に関する支給決定は合理的裁量を逸脱しており、本件特殊勤務手当条例五条二項の運用上違法である。
(二) 特殊勤務手当の性格上、勤務の時間や回数を単位として個別に算定し支給決定をすべきであるにもかかわらず、被告塩本町長は、本件各特殊勤務手当について、特殊勤務の業務実態や根拠に関係なく、特殊でない業務も含めて、一律に本件特殊勤務手当条例五条二項に規定された最高限度額を支給決定しており、同項で認められた町長の裁量権を逸脱した違法がある。
(三) 人事院通達によれば、国家公務員の特殊勤務手当の支給に当たっては「特殊勤務実績簿、特殊勤務手当整理簿」の整備が必要であるとされており、右趣旨は地方公務員の特殊勤務手当の支給における手続においても同様であるから、被告塩本町長が右手続を踏まず業務従事の日時や時間等の処理もないまま本件各特殊勤務手当を支給しているので、運用上の違法があり、その支給は違法である。
(被告らの主張)
(一) 被告塩本町長は、条例の範囲内で特殊勤務手当の額を決定しており、何ら違法ではない。
(二) 本件各特殊勤務手当は、被告日野病院長が「衛生業務」に従事すればその支給要件を満たすのであり、衛生業務の内容及び範囲からして、時間や回数を個別に算定する必要はない。
5 被告塩本町長の不法行為及び被告日野病院長の不当利得の成否
(原告の主張)
被告塩本町長は、被告日野病院長に対する本件各給与を支給することにより、土庄町に損害を与えることを知りながら、誠実執行義務を課す地方自治法一三八条の二に違反して、故意又は重過失によって違法な支出命令をなし、土庄町に被告日野病院長に対する本件各給与のうち、土庄町長の給与を超える二六一〇万四〇〇〇円の支出金相当額の損害を与えたものである。また、被告日野病院長に対する右給与部分が違法であるから、被告日野病院長は被告日野病院長に対する右給与部分を不当に利得している。
(被告らの主張)
被告日野病院長に対する本件各給与は、本件給与条例や土庄町職員の給与に関する規則(以下「本件給与規則」という。)、本件特殊勤務手当条例、本件特殊勤務手当規則等に基づいて支給された適法なものであり、被告塩本町長には地方自治法一三八条の二の義務違反もない。
また、被告日野病院長に対する本件各給与の支出は何ら違法ではないから、同被告にも不当利得が生ずる余地はない。
第三争点に対する判断
一 被告日野病院長に対する本件各給与の支給は、異常に高額であり、地方公務員法二四条一項、三項、地方自治法二条一三項に違反する違法な支出であるか(争点1について)。
1 前記前提となる事実3、4によれば、被告日野病院長に対する本件各給与は三三一六万三四七二円で、被告塩本町長の給与は一四二二万〇五二〇円であるから、被告日野病院長に対する本件各給与は、被告塩本町長のそれの約二・三三倍である。
2(一) そこで検討するに、証拠(甲一、八の2、証人柴田正巳、同木曽秀平)によれば、次の事実を認めることができる。
被告塩本町長は、特別職であり、地方公務員法の適用を受けない(地方公務員法三条三項一号、四条二項)ところ、町長等の特別職の給料は、特別職報酬等審議会に諮問し、行政職給料表の最高号数との比較において決定されている(甲一)。
他方、被告日野病院長は、一般職であり、同法の適用を受けるところ、行政職給料表より高額の医療職給料表の適用を受けている。なお、土庄中央病院の医師の平成八年度の平均給与月額は一三二万二九〇八円、その年額は一五八七万四八九六円(平均年齢三七・三歳)であり、被告塩本町長の給与を上回っている(甲八の2)。
(二) したがって、被告日野病院長に対する本件各給与が、被告塩本町長のそれの約二・三三倍であることを根拠として、地方公務員法の適用を受けない特別職である被告塩本町長の給与と、同法の適用を受ける一般職である被告日野病院長に対する本件各給与とを比較して、本件各給与が同法二四条一項、三項に違反すると断定することはできない。
3 被告日野病院長の本件各給与と同種の病院長の給与とを比較するため、さらに検討する。
(一) 証拠(甲一、三、四、八の1、九、一〇、証人柴田正巳)によれば次の事実を認めることができる。
香川県内の他の公立病院の病院長の給与額と比較すると、被告日野の本件各給与は低い水準ではないが最も高額でもない(甲一、証人柴田正巳)。
原告が、平成八年九月一七日、自治省財政局準公営企業室の担当官に公立病院の病院長の年俸を照会した結果によると、北海道で三七二床、五八歳の病院長が一七七五万円、宮城県で五三〇床、六四歳の病院長が三八八六万円、同県で三七九床、六五歳の病院長が二二九四万円、広島県で五七床、四七歳の病院長が二四八一万円、同県で一五〇床、四九歳の病院長が一九三〇万円であった(甲三)。また、原告が平成一一年八月に調査したところによると、宮城県涌谷町のセンター長(院長)の年俸は二七〇〇万円程度、山口県大島町の病院長の年俸は町長の約倍額である二五〇〇万円程度であった(甲一〇)。
人事院給与局編の民間給与の実態によると、平成九年の民間における病院長(部下に医師五人以上)の決まって支給する給与の平均給与月額は一五三万七一八一円(平均年齢五七・八歳)であり、その年収は、右平均給与月額の一二倍である一八四四万六一七二円と賞与(期末手当)に成る(甲四)。
(二) 以上の認定事実によれば、被告日野病院長の本件各給与は公立病院長の給与の中でも最も高額な部類の給与に属すると認められる。
しかしながら、公立病院の医師の給与は、経営主体別にみると、医師の確保が比較的困難な町村が一番高く、次いで組合、市、都道府県、指定都市の順となっており(甲九)、病院長の給与もそれに準じて考えることができると解される。被告日野病院長は、直接診療行為に当たるほか、土庄中央病院を統括して管理運営するという第一次的な責任を負っている(証人木曾秀平)こと等を考慮すると、被告日野病院長に対する本件各給与が三三一六万三四七二円という高額であり、被告塩本町長のそれの約二・三三倍であることが、地方公務員法二四条一項の職務給の原則、及び同条三項の均衡の原則に違反するとまで解することは困難である。
4 また、地方自治法二条一三項の「事務処理に当たって、最少の経費で最大の効果を挙げる」との規定は、地方公共団体の事務処理を行うに当たって準拠すべき指針を示したものであって、本件各給与という個別の支出の適法性に直接影響する規定ではないと解される。したがって、本件各給与が高額であることをもって、同条項に違反する支出であるとは解されない。
二 本件特殊勤務手当条例五条二項は、給与条例主義(地方自治法二〇四条三項、二〇四条の二、地方公務員法二四条六項、二五条一項)に反するか(争点2について)。
1 地方自治法二〇四条の二は、「普通地方公共団体は、いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基く条例に基かずには、職員に支給することができない。」旨定め、同法二〇四条三項は、「給料、手当及び旅費の額並びにその支給方法は、条例で定めなければならない。」と定める。また、地方公務員法二五条一項は、「職員の給与は、給与に関する条例に基いて支給されなければならない。」、同法二四条六項は、「職員の給与は条例で定める。」旨規定する。
これらの規定は一般に給与条例主義といわれるところ、右規定の趣旨は、給料や手当等の種類、額及び支給方法といった基本的な内容については法律又は条例に具体的根拠があることを要し、もって、職員に対して給与を権利として保障するとともに、予算措置のみによるいわゆるお手盛りを防止し、納税者たる住民の代表である議会の条例制定を通じて、地方財政の重大な比重を占める給与の適正かつ公正な支給を民主的にコントロールすることにあると解される。そして、給与の一つとして支給される特殊勤務手当についても、右規定が当然に適用されるものであり、したがって、特殊勤務手当の支給額の基本的事項については、条例に基づいて支給すべきであって、この判断を広く地方公共団体の長の裁量に委ねることは給与条例主義を定めた右規定の趣旨に反し、許されないというべきである。
2 この観点から本件についてみるに、本件特殊勤務手当条例五条二項は「手当の額は、勤務一月につき当該職員の給料月額の一〇〇分の七〇に相当する金額の範囲内で町長が別に定める。」、「ただし、医療職給料表の適用を受ける職員のうち職務の級が四級に該当する職員については、当分の間、この項に規定する金額に月額一〇〇万円を超えない範囲内の金額を加算することができる。」と規定して、特殊勤務手当の支給額の上限を具体的に定めて住民の負担の限度を明示しているのであって、町長に対してその支給額を白紙委任していないところである。もっとも、右金額の範囲では町長に裁量を認めたものであり、病院長に対して給与を権利として保障する観点から給与条例主義に違反する疑いがないではないが、お手盛りを防止して給与の支給を民主的にコントロールするという趣旨は満たされていること、本件特殊勤務手当規則では定額一〇〇分の七〇が確保されており、町長の裁量は一〇〇万円のみであること、後記三8のとおり、本件特殊勤務手当条例五条二項は、病院長の特殊勤務手当が高額に過ぎるとの批判を受け、被告日野病院長の従来の特殊勤務手当をかなり減額する内容に改正されたものであるが、さらに右批判に対し適切に対応できるように一時的な規定として町長にその裁量を認めた内容となっており、町長への委任には相当の理由があること、他方、病院長に対する給与は本件各特殊勤務手当を除いても町長の給与程度の高額の給与が権利として保障されていること等に照らし、右条項は、給与の額に関する基本的事項を定めたもので、右判断を不当に広く町長の裁量に委ねたものではないというべきである。
以上によれば、本件特殊勤務手当条例五条二項は、地方自治法二〇四条三項、二〇四条の二、地方公務員法二四条六項、二五条一項に違反しない。
三 本件特殊勤務手当条例五条は、議会の裁量権を逸脱・濫用した違法があるか(争点3について)。
1 一般的に言って、医師の職務は、衛生業務、臨床業務のほかに基礎的学術研究、医療行政、医学教育など広範な分野に及ぶところ、本件給与条例別表第2の医療職給料表は、医師である職員に対する給料を定めるものである(弁論の全趣旨)が、本件特殊勤務手当条例五条二項の規定と対比検討すると、医療職給料表は、医師が「衛生業務」に従事することを当然に前提としているわけではなく、医師の職務は医療職給料表で評価し尽くされているものではないとの前提で制定されていると解される。
そして、証拠(証人柴田正巳)及び弁論の全趣旨によれば、右「衛生業務」とは、医師の診療業務のほか、予防医療や保健業務、及びこれを管理運営する業務も含むと認められ、これに反する証拠はない。
2 原告は、土庄中央病院長の職務の特殊性が医療職給料表による給料、管理職手当、初任給調整手当において既に評価され尽くしているので、右「衛生業務」を特殊勤務手当の支給対象とすることは違法である、本件給与条例等にいう「給与上特別の考慮を必要」とする場合とはいえないと主張するので、以下検討する。
3 土庄中央病院長の給与体系
給料は、本件給与条例別表第2の医療職給料表によるが、同表は、一般職の職員の給与に関する法律別表第八イとほぼ同じ内容であることからすると、国家公務員の医療職給料表に準拠したものと認められる。
管理職手当は、本件給与条例七条一項の「任命権者は、管理又は監督の地位にある職員の職のうちその特殊性に基き、給料月額につき適正な管理職手当を定めることができる。」として管理職手当の規定を定め、右病院長の管理職手当は、本件給与規則二八条、別表第1により、病院長に対して給料月額の一〇〇分の二五以内を支給すると規定している。
初任給調整手当は、本件給与条例一九条の二の「医療業務に従事する医師である職員のうち採用による欠員の補充が困難であると認められる職で規則で定めるものに対し、月額三〇万七五〇〇円を超えない範囲内で、採用の日から三五年以内の期間、規則で定める期間を経過した日から一年を経過するごとに、その額を減じて、初任給調整手当を支給する。」として初任給調整手当を定め、本件給与規則二九条により、病院長に対して別表第2の初任給調整手当を支給すると規定している。
被告日野病院長は、右のとおりの医療職給料表に基づく給料、管理職手当及び初任給調整手当等の支払を受けており、給料の調整額を支給されていない(弁論の全趣旨)。
なお、原告は、離島地域であるが故の優遇措置については、特殊勤務手当ではなく特地勤務手当の支給理由になるにすぎないと主張するところ、本件給与条例には「特地勤務手当」の規定がないので、これを考慮する余地はない。
4 土庄中央病院長の職務
(一) 証拠(乙七の1、2、一二、証人柴田正巳、同木曽秀平)によれば、以下の事実が認められる。
土庄中央病院は、病床数一三〇床、診療科目は九科目、職員は一二九名、うち常勤の医師は一二名(平成一〇年六月一日現在)で、名実ともに小豆島における中核的総合病院であり、同病院長の職は、同病院の組織上の最高責任者である。被告日野病院長の場合は、外科を専門とし、週に四回患者の診療に直接当たり、その他の一日には、外科や総合的な入院患者の回診を行っており、時折、手術に緊急に立ち会うこともある。また、医師・看護婦等のスタッフを充実させるために、月に何回か医局会や院内感染の対策委員会を開き、毎週曜日を決めて医師等を集めて新薬の勉強会を行うなどしている。病院施設の設備の改善、医療器具の購入、機器の更新、薬品の購入等について、研究会等で医師の意見をまとめて調整するなどして最終的に決定する。加えて、土庄町は島嶼部ということもあって医師の確保は難しく、病院で勤続する医師は、病院長、副院長を除いて基本的に勤続二年で交替しているが、同病院長は、関連病院である岡山大学の各教室に直接依頼して医師の確保に努め、あるいは、自治体病院の卒業生を確保するために県の医務課との折衝などに当たっている。さらに、老人会や婦人会において保健事業について講義を行ったり、患者グループに対して糖尿病対策の指導講演を行うこともある。なお、同病院長は、香川県下にある八つの国保病院の協議会の理事を務め、各病院の情報、調整にも当たっている。
(二) 右の事実によれば、土庄中央病院は名実ともに小豆島における中核的総合病院であり、同病院長の職務は、「医師として患者の診療に当たりながら、右規模の病院を統括管理するというものであるところ、地理的に離島に存在する悪条件のもと、医師・看護婦等の医療スタッフを充実させるとともに、全職員を効率的に機能させ、もって医療水準の維持向上を図らなければならない」という著しく困難な職務であり、かつ、医師として診療業務に従事する際には医療業務特有の危険、不快、不健康など困難な要素を伴うことも避けられないことが認められ、同病院長の職務は著しく特殊な勤務であると解される。
5 恒常的常態的な職務の特殊性については給料で考慮すべきであるか。
土庄中央病院長の職務は、原告の主張するように、恒常的常態的なものであり、一時的に発生する性質のものではない。この点について、本件給与条例等によれば、特殊勤務手当は、「その特殊性を給料で考慮することが適当でない」場合に支給されることとされているところ、給料は、公務上の疾病等による休職の場合にも支給され、期末手当、勤勉手当の算定の基礎になる(本件給与条例一八条三項、一九条三項)など、長期にわたる安定した給与措置としての性格を有しているから、右各条例にいう「給料で考慮することが適当ではない場合」とは、原告の主張するように、職務の特殊性が臨時的一時的に発生する場合や、その特殊性を恒常的常態的にとらえることが困難であったり、標準化画一化して評価することが困難な場合が典型的なものであるといえる。しかし、<1>給料で考慮すると、期末手当、勤勉手当等にも反映されて町の財政負担を増加させることとなること、<2>給料を算定の基礎とする退職共済年金の額が地方公務員等共済組合法七九条(その他、同法四四条参照。)に規定されているなど、条例によって財政の枠組を変更することにも限界があることなどに照らすと、恒常的常態的な特殊性を有する場合であっても、給料で考慮するには影響が大きすぎると解されるものについては、右条例にいう「給料で考慮することが適当ではない場合」に該当するとして、特殊勤務手当の対象とすることができるというべきである。
6 他の公立病院の特殊勤務手当について
証拠(甲九、一〇、一一の1、2)によれば、ほとんどの公立病院において、その勤務医師に対し、「医療業務従事職員手当」、「医師手当」等の名目で、特殊勤務手当を支給していることが認められる。
7 右3ないし6で検討したところを総合すると、特に他の公立病院の特殊勤務手当の支給状況及び土庄中央病院長の職務の著しい困難性等によれば、土庄中央病院長の職務の特殊性が給料、管理職手当、初任給調整手当において既に評価され尽くしているとまで認めるに足りず、他にこれを認めるに足る証拠はないというべきである。
したがって、土庄町議会は、法律の範囲内で(憲法九四条)、法令に違反しない限りにおいて(地方自治法一四条一項)、広範囲に条例を制定することができるところ、本件特殊勤務手当条例五条が、議会の裁量権を著しく逸脱し、これを濫用した違法があるとは解されない。
8 また、原告は、本件特殊勤務手当条例五条は、これまで被告日野病院長に支給してきた給与に対して形式的に合法性を与える目的だけで改正されたものといえるのであって、その制定経緯からすれば当初から給与条例主義潜脱の意図が存在し、違法無効であると主張する。
よって、検討するに、証拠(甲一、二、証人木曽秀平)によれば、以下の事実が認められる。
平成七年六月の土庄町の定例議会において、被告日野病院長の高い給与について問題とされ、十分な論議を行うように求める意見が出ていたが、平成八年四月ころ、原告から被告日野病院長の給与について監査請求がなされたことなどから、町の執行機関がこれについて検討し、特殊勤務手当の問題を認識するとともに、県の指導もあって、町の執行機関は、特殊勤務手当の限度額を定めるために、平成八年六月の議会で条例の改正を提案し、その際、これまでの被告日野病院長の給与が維持できる額を原案としたが、右改正案は支給加算額の減額や支給期限の設定などの修正を経て議決され、平成八年七月二五日条例第二二号により本件特殊勤務手当条例(ただし、前記二2(三)のとおり、後日遡及して改正された部分を除く。)に改正された。右改正の経緯に加え、改正前の特殊勤務手当条例五条二項は、衛生業務従事職員に対する特殊勤務手当の支給額の基準について「その額は町長が別に定める。」と規定するのみで、その額や支給方法を一切町長に委任している点で給与条例主義に違反する疑いが濃厚であったことなどを併せ考慮すると、本件特殊勤務手当条例への改正は特殊勤務手当の公正かつ適正な支給を行うためのものであったと認められ、本件特殊勤務手当条例五条が、形式的に合法性を与える目的だけに作られたものであるとか、給与条例主義を潜脱する意図で作られたものであるとは到底認められないというべきである(なお、原告は、被告日野病院長の従来の給与を維持する内容の改正案であったことを右のような意図があったことの根拠とするようであるが、右改正案の存在から直ちに給与条例主義を潜脱する意図があるとはいえない。)。
したがって、原告の右主張は採用できない。
四 本件各特殊勤務手当の支給決定は違法であるか(争点4について)。
1 本件各特殊勤務手当の支給については、条例の議決機関である議会の裁量により定められた条例の許す範囲で、町長は、これに基づき、諸事情を考慮して支給額、支給方法を決定できるというべきであり、その裁量を逸脱濫用したと解される特段の事情のない限り、運用上違法とはいえないというべきである。
2 以上を前提に本件についてみるに、本件各特殊勤務手当は給与条例主義に反しない本件特殊勤務手当条例等に基づいて支給されているのであるから、その特殊勤務手当の額が最高限度額であったり、給料の五割を超えるからといって、直ちに被告塩本町長の支給決定が裁量を逸脱したものになるわけではなく、他に裁量を逸脱濫用したと窺われる事情も証拠上認められない。
3 また、原告は、国家公務員の特殊勤務手当の支給において整備が義務づけられている「特殊勤務実績簿、特殊勤務手当整理簿」といったものを備え付けたり、その業務に従事した日時や時間を算定することなく、本件各特殊勤務手当が支給されており、運用上の違法があると主張する。
国家公務員に対する人事院通達がそのまま地方公務員に適用されるわけではないが、特殊勤務手当は本件特殊勤務手当条例等に「その勤務の特殊性に応じて支給する」と規定されていることからも明らかなように、特殊な勤務に従事したことに対して支給されるものである。しかし、恒常的常態的な内容の特殊勤務については、勤務日数に応じて月額で支給することも特殊勤務手当の性質に反するとまではいえない。そして、このような恒常的常態的な勤務に対して月額で支給する場合には、勤務日数を把握しこれに応じて支給されれば足りるというべきであって、必ずしも、国家公務員の特殊勤務手当の支給において整備が義務づけられている「特殊勤務手当整理簿」と同等のものを備え付けなければならないわけではない。
被告日野病院長の業務は、既にみたとおり、恒常的常態的な特殊性を有しており、本件各特殊勤務手当は、本件特殊勤務手当条例五条二項等に定められた月額支給の規定に基づき、月額で支給されており、また、証拠(証人柴田正巳)によれば、病院では出勤簿が備え付けられていることが認められる(そして、本件特殊勤務手当規則一四条には、勤務日数に応じて手当の額を調整することができる旨規定されている)。
したがって、右原告の主張は採用できない。
五 以上によれば、本件特殊勤務手当条例に基づく被告日野病院長に対する本件各給与の支給は何ら違法ではないから、原告の被告らに対する請求は、その余の判断をするまでもなくいずれも理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用については、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 馬渕勉 裁判官 真鍋美穂子 裁判官 佐藤弘規)